Chapitre1:日韓恋愛物語の始まり

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この恋愛物語は、甘くて苦い未熟な20代前半を生き抜いた、私の人生を振り返ったもの。

恋愛は楽しくも苦しくも、切なくもある。

 

出会わなきゃ良かったと思うこともあれば、なんで別れたのか悩み、失いたくなかったと思うこともある。

今大切な人がそばに居る人、大切な人を失った人、これから大切な人を見つける全ての人に捧げたいと思う。

 

大切な人と出会った事実は変わらず、その経験は宝物として生涯の財産になっていく。

これだけはどうか忘れないで居て欲しい。

 

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エピソード1:ソイ姉さん

「mioは今も俺の心の中にずっと居るよ。」

これが、彼の口から聞いた最後の言葉だった。

 

彼と初めて出会ったのは、暑い夏の日。

同じクラスだった仲の良い韓国人、ソイ姉さんからの紹介だった。

彼との恋愛を語るうえで外せないキーパーソン、ソイ姉さん(以下オンニ)の話から始めたいと思う。

 

私は留学中のフランスから夏休みで一時帰国し、東京に滞在していた。

地方の実家には帰りたくないほど、東京が大好きだった。

留学前に一年過ごした東京での生活は、幸せそのものだったから。

 

通っていた専門学校では、毎日課題に追われ寝不足でフラフラの毎日だったけれど、それはそれで楽しかった。

一時帰国中も、同じ専門の友達や地元から上京した友達、バイト先の友人知人と毎日遊びほうけていた。

 

東京に住まいがない私は、オンニの家に滞在していた。

オンニは私より3つ年上なだけなのに、韓国の歳にすると5個離れてるからmioはもっと子供だよ!とよく言っていた。オンニは、面倒見の良い姉貴って感じかな。

 

待ち遠しい夏休みがやってきて、日本へ帰国する当日のこと。

オンニは、私がしばらくオンニの家に滞在するのを快く引き受けてくれていたけど…

空港からウキウキしながらオンニの家に行きチャイムを鳴らすも、全く出てこない。

 

オンニ、相変わらずだな…

そう思って、ひたすらチャイムを鳴らし続け鬼のように電話をしまくる。

たったドア1枚を隔てて、大好きなオンニが向こう側に居る。

早く会いたいのに!

 

しばらくすると、眠たそうなオンニが数分かけてやっとドアを開けた。

寝起きのハスキー声で一言、「…入って」

 

久しぶりの再会に今すぐにでも飛びつきたい私を制し、オンニはゆっくりとタバコに火をつける。

オンニはいつもそうなんだよね。

もう何か月も会ってないのに、下手したら一年近くも会ってないのに。

 

どれだけ久しぶりに会っても、「いや、昨日会ったばっかりじゃん..」とでも言わんばかりの顔。

「オンニ、いつも昨日会ったみたいな顔して…と突っ込むと、「でもそのほうが良いんじゃない?いつも隣にいるようなもんってことじゃん」そう言ってオンニはタバコをふかしながら笑う。

 

それを見て私は、「あー日本帰ってきたなぁー」と大きなあくびをしながら体いっぱいに伸びる。

このやり取りがもうすでに楽しくてウキウキしていた。

 

オンニとは、専門学生1年の頃からの仲。

あまり日本語が得意じゃなくて、人付き合いも苦手なオンニだったけど。

とにかく人に何かを与えるのが好きな人で、一緒に居て心地よかった。

 

私が年下というのもあるのかもしれないけど、オンニは本当に気前が良くてよくおごってくれた。

何でもくれるから、それに対して気分が良いという気持ちもあったけど。

それ以上に人にこんな風に色々なものを与えられる人って、純粋にすごいと尊敬していた。

 

だけど、オンニはあまり学校になじめず同じ韓国人とも仲が良くなかった。

人見知りで仲良くなるまでに時間がかかるし、学校もよく休む。

話せば面白くて、リアクションも大きくて力も強いから、男子は特にポカポカよく叩かれていた。

 

そんなオンニは、自分のことをあまり話さないので、同じクラスの子からは少し不思議な目で見られていたように思う。

羽振りが良いのも、夜の仕事をしているからだ…と悪い噂を裏付けるようなものだった。

 

それでも、つたない日本語で話しかけてくるオンニが可愛くて日本語をよく教え、次第に仲良くなっていった。

よく電話もするしご飯も食べに行くし、オンニんちには何度も泊まりに行き同じベットで一緒に眠る仲だ。

 

私が留学してから、お互いに2年生になりその間も電話でよくやり取りしていた。

でも、オンニは私が居なくなってからは学校に余計に行かなくなり結局辞めてしまった。

 

「私がずっと同じ専門に居たら、オンニはきっと学校を辞めてなかったよな。

いや、私が辞めさせなかったよなぁ。」

 

そんな風に思いながら、床に散らばっている教科書を眺めた。

専門を辞めてからは、日本に滞在する目的だけの学校に行ってるって言ってたっけ…

その学校で使ってるらしい教科書を眺めていた時のことだった。

 

ドンドンドンドン!

急に、破れるんじゃないかと思うほど激しくドアが叩かれたのはその時だった。

「ソイさん!居るんですよね?!」外からは、オンニの名前を呼ぶ男性の声が聞こえた。

 

慌ててオンニの方を見ると、少しおびえたように首を横に振った。

誰も出てこないとわかると、男性はドアの下の隙間にさっと封筒を挟めそのまま立ち去って行った。

 

男性がその場を離れたのを確認し、オンニに「今の何?!」と詰め寄る。

オンニは、封筒をスッと取りため息をつきながら「多分、家賃のことだと思う」と一言。

 

「は?!家賃払ってないの?今の借金取りみたいじゃない?怖いんだけど…!」

と矢継ぎ早に言う私。

そして、おそらくオンニが理解できないであろう封筒の中身を見る。

 

それは、3日以内に1か月分の家賃9万円を入金してほしいという内容の督促状だった。

フゥと一息ついて、何で滞納しているのかをオンニに聞いてみた。

 

するとオンニは、病院に行っていたとか入金がたまたま遅れたとか言い訳を始める。

オンニはいつもこうだ。

支払えなかった理由を言っているつもりなんだろうけど、私にはただの言い訳にしか聞こえない。

 

「オンニ、家賃は払おうよ。」

それだけ伝えたら、なんだか急に疲れが出てきた。

 

日本に帰ってきたばかりだしまずは腹ごしらえ…と、寝起きのオンニと共にご飯を食べることにした。

オンニはほとんど料理をしないけれど、韓国の実家から送ってもらった韓国料理がよく冷蔵庫に入っていた。

 

それをおかずに、近況報告をしながらご飯にすることに。

食べ終わると時差ボケからか眠くなり、気付いたら長い時間眠っていて…あっという間に次の日になっていた。

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