Chapitre2:ジェリーさんの経歴3

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ジェリーさんが毎日クタクタに働いていた頃、一緒にルームシェアしていたソイ姉さんの兄は毎日遊んでばかりだった。

ジェリーさんと同じく料理人として働いていたが、

「どう楽して生きるか?」

が人生のテーマだったというのんきな人だ。

 

ソイ姉さんの兄には、韓国人の彼女がいた。

ソイ姉さんも会ったことがあると以前言っていた。

同い年の彼女で、インチョンに実家がある。

 

お金持ちだったらしく、結婚したら俺は一生安泰だと言いふらしていたらしい。

もちろん、それを言われた彼女は相当嫌がっていたそうだがそれでも彼のことが好きだったらしい。

 

2人はオーストラリアのグリーンカード(永住権)を得るために結婚したのだが、結局グリーンカードはもらえなかった。

お金と時間と手間をかけたが、得られるものは何もなかったということだ。

グリーンカードが取得できなかった2人は、そのまま韓国に戻り自然とお互いから離れるように別れていったのだった。

 

ジェリーさんも同様にグリーンカードを申請していたが、待てど暮らせど返事は無く…結局取得することが出来なかった。

他にも様々なオーストラリアでの出来事を教えてくれた。

 

韓国人は外国で売春婦として働いている人が多いと言われていたが、オーストラリアはもっともメジャーなところだ。

ジェリーさんが通っていたオーストラリアの語学学校では、同じクラスの女の子が売春していたのだそう。

 

それは、ソイ姉さんの兄が偶然お店で鉢合わせて発覚したのだとか。

つまりは、ソイ姉さんの兄も浮気していたということだ。

学費を稼いだり韓国にお金を送るために売春婦として働く子も多いと言っていた。

 

ある時、ジェリーさんは交通事故を起こした。

当時ジェリーさんは16時間以上働くなどかなり働きづめだった。

当然と言えば当然だったのかもしれない。

 

ジェリーさんは保険に入ってなかった。

なのに、居眠り運転をして事故を起こした。

軽く怪我をしたため30万の治療費がかかった。

車は横転してひっくり返ったが体は無事だったらしい。

 

あとは、ソイ姉さんの兄が車を買いたいと言うのでジェリーさんが200万貸した話とか。

なかなか返してもらえず、やっと分割でソイ姉さんの父が返済して大変だった話とか色々な話を聞いた。

 

最後は恋愛の話。

ジェリーさんはカナダで出会った彼女を韓国に残し、なんと7年近くにも及ぶ遠距離恋愛を続けていた。

しかし、その恋愛は突然幕を閉じる。

 

なかなか韓国に戻らないジェリーさんに対し、彼女がついにしびれを切らしたのだ。

別れよう、と。

 

年に1・2回戻る程度だったため、彼女も相当寂しかったに違いない。

でも、彼女は敬虔なクリスチャン。

久しぶりに会ってもあまりイチャイチャすることも出来なかったそうだ。

少しでも体に触れれば驚かれ、拒否されることもあったためコミュニケーションも上手く取れなかったらしい。

 

当時ジェリーさんはまだ結婚する気持ちはさらさらなかったそうなのだが、別れると突然言われてあわてて韓国に戻ると言ったそう。

でも、彼女の決意は固く結局はお別れすることになったのだとか。

ジェリーさんの彼女が敬虔なクリスチャンであったことも、問題になったことがあったらしい。

 

家族全員が敬虔なクリスチャンであり、毎月教会に寄付していた。

結婚したらジェリーさんにも月10万円は寄付してほしいと言っていたそうだ。

 

私の韓国人の友達にもクリスチャンが多いため、珍しい話ではないと思うけれどそれを聞いたジェリーさんの母親は激怒。

なぜクリスチャンでもない息子が毎月10万円ものお金を教会に寄付しないといけないのか?ともめたことがあったらしい。

 

しかし、その後まもなくしてジェリーさんは別れた。

自分のせいだと思った母親は、ジェリーさんに悪いことをしてしまったと思い今後はどんな人と付き合うことになっても何も言わないから、と言っていたそうだ。

 

そして、オーストラリアで2年を過ごした後自分で仕事を見つけてドバイに行った。

ドバイは、年中暑くて外にはずっと居られない。

屋内はめちゃくちゃ涼しく、中にはスケート場もあるなど未知の世界の話のようだった。

 

私もパリに住んで居るけれど、その周辺の国しか行ったことがないし、アメリカや中東なんかは大陸が違うからまた全然別世界なんだろうな…といった印象だった。

まぁ、暑いのが苦手だからドバイに住むことはないだろうけれど。

ドバイでは、イギリス人のルームメイトと一緒だったけど彼はゲイだったから襲われないか心配だったという話も聞いた。

 

とにかくそんな感じでジェリーさんの話は自分の想像を超えた未知の世界で…

どこか別世界にでも行ってきたような感じがして、いつも話を興味深く聞いていた。

 

そしてドバイでの滞在を終えたジェリーさんは、父親との約束で韓国に戻ってビジネスをすることを決めた。

完全に帰国する前の半年だけ、日本で過ごすことになりついでに日本語も学ぶという時に私と出会った。

 

ジェリーさんは、韓国に戻ったらどんなビジネスをやるかいつも考えていた。

色々なレストランに行き、食べ歩きをしては研究を続けていた。

そういえば、東京でもパスタや和食、色々なレストランに下見に行ったり色々な味を試したって言ってたっけ。

 

通訳を交えたり、翻訳機や辞書を使いながらの会話でもジェリーさんの話は面白い。

私より長く生きている分、次から次へと沢山話題が出てくる。

良い話もあれば悪い話もある。

 

ジェリーさんの話の中には人生の厳しさが伝わってくるような話もあるけれど、それでもそのどれもが輝いて見える気がした。

そして見ている人を魅了する。

なんとなく、ジェリーさんにはそういう魅力があるように思えた。

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