Chapitre1:焼き肉屋からカフェへ

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ジェリーさんは英語と韓国語、私はフランス語と日本語を話すので、共通言語がない。

お互い意思疎通がほとんど出来なかった。

彼は、ONE PIECEの漫画が好きとかで時々「ゴムゴムの実」とか言いながら腕を伸ばして場がしらける…という、ちょっと面白い人だった。

 

おそらく、当時話せる日本語がほとんどなかったので、とりあえず知っている単語を口にしていただけだと思う。

しかも「俺は完璧な男だ」と言っていたからナルシストなのか、プライドが相当高い人なのか…と最初の印象はイマイチ。

まさかこの後この人と一緒になるなんて…この時は想像もしなかった。

 

後で聞いたら、完璧な男というのは男性には興味がない完全な男という意味だったらしい。

彼は、日本に来る直前にオーストラリアからドバイへ引越しそこで仕事をしていた。

その時のルームメイトがイギリス人のゲイで毎日おびえていたとか…なるほど。

 

ゆっくりと食事を済ませ、焼肉屋サンパを後にすると「カフェに行こう」と誘われた。

近くのファミレス、ジョナサンへ行き私はもうお腹いっぱいだったけど、オンニが食べろというので2つもケーキを注文する。

 

オンニはその間に電話をするために席を立って帰って来なかったり、いつも通り自由に過ごしていた。

オンニが戻って来てしばらくすると、何やらホスさんの様子がおかしい。

 

なんだか、顔がところどころ赤い。

それにホスさんもなんだか元気がなさそうだ…一体どうしたんだろう?

そのことに最初に気付いたのが彼だった。

 

彼が、どうしたの?と聞くと「いや、実は…俺エアコンの風アレルギーなんだよ。」と。

エ、エアコンのアレルギー…?

そこでどっと笑いが起きる。

辛いはずの本人には申し訳ないが、面白すぎる。

 

確かにホスさんのすぐ斜め上にはエアコンがあって、顔に直接エアコンの風が当たるような感じではあった。

ホスさんの顔には、本当にアレルギーのようにポツポツと赤い発疹みたいなものが出来ていたんだけど「嘘でしょ?そんなアレルギーあるの?」とつい皆笑ってしまったのだ。

 

その後はなんとかエアコンの風をしのいで、それ以上の悪化は防げた。

 

そうして楽しい一時を過ごし、じゃあそろそろ帰ろうかという時にホスさんが「じゃあお近づきのしるしにメールアドレスを聞いても良いですか?」という。

素直に友達が増えて嬉しかった私は、オンニも友達だしと思い連絡先を交換した。

 

あとから彼に聞いたところによると、ホスさんは最初「mioは人気あると思うから番号とか聞けない」と言っていたそうで、それなのに真っ先に聞いてたのには驚いたって。

完全に出し抜かれたと笑って言っていた。

___

帰り道、今日楽しかったねと話しながら歩いて帰っているとオンニに電話が入る。

いつものことながら私には理解できないオンニの韓国語。

聞き流していると、オンニが電話の途中で「ねぇ、ジェリーさんが連絡先を知りたいって言ってるんだけどいい?」ってにやけながら聞いてくる。

 

「オンニが良いなら別に良いよ。」そう言い、足早にオンニんちに戻る。

そして家に戻り、電話をやっと切ったオンニは嬉しそうに話し始める。

「ねえ、なんかジェリーさん、mioのこと気になってるみたいだよ。連絡してみてね。」という。

 

「でもさ、日本語全然話せないのにどうやって会話すんの?」と私。

「それはこれから勉強するでしょ。」とオンニ。

こういう時のオンニは、いつもやたらポジティブなんだよなぁ。

 

ジェリーさんは今、日本語学校に通っていて半年くらいは日本に居るみたい。

じゃあ少なくとも会話が成り立つようになるのは半年後くらいかな、、、そう思ってふとケータイを見るとジェリーさんからメールが来ている。

 

さっそく開くと「今日はありがとう。ゴムゴムの実」と書いてある。

ゴムゴムの実本当好きだよね、と苦笑しながらも「今日はごちそうさまでした。日本語上手になってね!」と送ると「うん、日本語頑張るおやすみ」と返ってきた。

 

「おやすみなさい~」と返し、その日は私もすぐに眠りについた。

翌日から、ホスさんとジェリーさんとのメールのやり取りが始まる。

ジェリーさんは、「何してた?ご飯食べた?」という内容のメールが多かったけどそれに対しホスさんからのメールは細かい質問が多い。

 

これって日本語でなんて言うの?この表現って合ってる?そんな内容のメールが多かった。

ホスさんは難しい表現や今はやりの言葉ばかり聞いてきたので、実際は私が答えられないことばかりだった。

 

最初はちょっと日本語の先生にでもなったような気分だったけれど、逆に私の方が日本語出来てないんじゃないかと思うほどだった。

その後もメールのやり取りは続き、また4人でご飯を食べに行ったりカフェに行ったりしながら遊んですごした。

 

ジェリーさんの日本語は相変わらず上達せず、いつも周りに通訳が必要だった。

それでもなんだかんだ楽しく過ごし、ホスさんとジェリーさんがオンニの家に来て4人でオンニんちで談話する仲になっていった。

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